【重要】なぜ他人を巻き込む事件が続くのか~埼玉県立てこもり事件の様な拡大自殺の防止策~
先日、埼玉県で、
医師を呼び出し、銃殺した上、約11時間立てこもりをした、
「埼玉県立てこもり事件」
という悲惨な事件が発生しました。
この事件は、立てこもり当初からテレビでライブ中継されるなど、大きな話題を生み、記憶に新しい方も多いと思います。
この事件を見て、
「なぜ、他人を巻き込むのか。」
「最近、こういうニュースが多い。」
「自分の近所だったらどうしよう。」
などと感じた方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、元公務員の筆者が、リサーチと、親交のある警察官やメンタルクリニック医師への調査を基に、拡大自殺の防止策をご説明します。
是非、最後までご覧頂ければ幸いです🙇♂️
と考えます。 では、目次に沿ってご紹介します。
目次
拡大自殺の防止策防
結論から言って、
情報共有の徹底と相談窓口の徹底
につきます。
※ 拡大自殺とは、
- 自分とは無関係の者を殺して自殺した場合
- 妬みや妄想の対象を殺して自殺した場合
- 愛し合う相手を殺して自殺した場合
- 自分が死んだら家族が生きていけないと家族を殺し、自殺した場合
を言いいます。【参考: 拡大自殺 – Wikipedia】
今回の案件は、未遂とはいえ、まさに拡大自殺と言えるでしょう。
順を追ってご説明致します。
埼玉県立てこもり事件について
では、今回の埼玉県立てこもり事件について、詳しくご説明し、問題点を見ていきます。
埼玉県立てこもり事件の概要
まず、事件の概要を見ていきます。
渡辺容疑者は2022年1月27日午後9時過ぎころ、鈴木さんの経営するクリニック関係者計7人を自宅に呼び出し、鈴木さんを散弾銃で撃った。理学療法士の男性(41)も撃たれて重体となった。は約11時間後の28日午前8時前。盾やヘルメットを装備した捜査員らが男の家の前に集まり、一気に突入した。男は殺人未遂容疑で緊急逮捕され、待機していた捜査車両に乗せられた。渡辺宏容疑者は立てこもった際、捜査員に鈴木さんの容体について「大丈夫だ」と話していたが、県警東入間署捜査本部は虚偽の説明をしていた疑いがあるとみて調べている。渡辺容疑者は、動機について、「母が死んでこの先いいことがないと思い、自殺しようと考えた」「自分1人でなく、先生やクリニックの人を殺そうと考えていた」と供述をしている。
【参考 :撃たれた医師、即死と判明 埼玉たてこもり – 産経ニュース (sankei.com)
埼玉立てこもり事件1週間 治療に不満か、計画性など追及 (msn.com)】
埼玉県立てこもり事件の背景
次に、この事件の背景には、何があったのでしょうか。
リサーチ結果を基に、事件の背景を挙げていきます。
- 母親の治療を巡って、複数の病院とトラブルがあった。
- 病院内で怒鳴ったり、暴れたりしている。
- 看病し続けた母親の死を受け入れられていない。
といったことが挙げられます。
実際に、事件当日も、渡辺容疑者は、「無くなった母に線香をあげてほしい」と、鈴木さんの経営するクリニック関係者数名を呼び出しています。
しかし、実際には、母親の死を受け入れられず、死後1日以上経過した母親に対する心肺蘇生を要望しており、この要望に応えなかったところ、事件に発展したと言われています。
【参考 :埼玉ふじみ野市立てこもり発砲事件と医師法 医師は患者を選べないのか【「表と裏」の法律知識】(日刊ゲンダイDIGITAL) – Yahoo!ニュース
<独自>事件前、複数の病院でトラブルか 埼玉立てこもり – 産経ニュース (sankei.com)】
埼玉県立てこもり事件の問題点
では、この事件の問題点はどこにあるのでしょうか。親交のあるメンタルクリニック医師や警察官に伺ったところ、以下のとおりでした。
病院同士での情報共有ができないこと
個人情報である以上、問題があったとしても、病院間での所謂「トラブルメーカー」の共有はしないそうです。事前に情報があれば、対処方針も変わってくることでしょう。
母の死に対する怒りの矛先が医師に向いたこと
通常であれば、困難な出来事に遭遇した時、徐々に立ち向かっていくものですが、他者に責任を転嫁してしまうことがあります。
今回の事件では、容疑者が母の死を受け入れられず、医師に責任を向けてしまったことです。
そういう精神状態になった時、こころのやり場を設けてあげることが必要でしょう。
全医師が最低限のメンタルクリニック知識をつけること
医師によっては、メンタルクリニックの知識が乏しい医師がいるそうです。メンタルクリニックの知識を付けておくことで、危険性を事前に察知できる可能性が増えます。また、怒りの矛先を他者に向ける可能性を減らすことができる場合があるとのことでした。
亡くなられた鈴木先生の人柄
今回、事件に被害者である鈴木先生の人柄が分かるエピソードをご紹介致します。調べていくと、
- 温厚で、自己犠牲の精神がある。
- 在宅医療やコロナ対策の第一人者
- 地域医療の要の人物
ということが分かりました。
心よりご冥福をお祈り致します。
親交のある、ふじみの救急病院の鹿野晃院長(48)によると、鈴木医師は性格は温厚だが、患者のためなら自分を犠牲にして突き進んでいたという。他の病院に迷惑をかけないように、できる限り在宅医療を選択。「新型コロナウイルス患者の往診も積極的に受けていた。この地域で名前を知らない人はいないんじゃないか」と語る。
立てこもりで死亡の医師 在宅医療に心血「地域医療の要」 – 産経ニュース (sankei.com)
近年の類似事例
それでは、近年の類似事例をご紹介致します。今回は、他人を巻き込んだ事件を対象に事例を4つ挙げます。
1 大阪心療内科クリニック放火事件
2021年12月17日、大阪 北区のビルの4階にある心療内科のクリニックが放火された事件では、巻き込まれた25人が死亡、1人が重体になっています。
警察は、この26人とは別に重篤な状態になっている谷本盛雄容疑者(61)を殺人と放火の疑いで捜査しています。
谷本容疑者は、大阪 西淀川区にある関係先の住宅から3キロ余り離れた現場のビルまで自転車で向かっていますが、捜査関係者によりますと、防犯カメラなどを調べたところ、途中、ほかの場所に立ち寄った形跡がないということです。
容疑者は先月下旬に、関係先の住宅近くでガソリンを購入していたほか、住宅の中からはクリニックに持ち込んだとみられるライターのオイルや果物ナイフのパッケージも発見されています。
クリニックは事件当日の午前10時から、仕事への復帰を支援するリワークプログラムが予定されていて、警察は谷本容疑者が関係先の住宅で事前に準備を終えたうえで、多くの人で混み合う時間帯をねらって直行し、事件を起こしたとみて捜査を進めています。
大阪放火事件 事前準備し混み合う時間ねらいクリニック直行か | 大阪 ビル放火事件 | NHKニュース
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【お願い】大阪心療内科クリニック放火事件 ~悲惨な事件を防ぐ3つのポイント~ | モガブログ (syuhumassigura.com)
2 東大前刺傷事件
2021年1月15日、大学入学共通テスト会場になっている東京大学の門の前で、受験に来ていた高校生男女を含む計3名が刃物で切りつけられ、怪我を負った。警察は名古屋市に住む高校2年生の17歳男子生徒を殺人未遂で逮捕した。「勉強がうまくいかず、事件を起こして死のうと思った」などと供述している。
受験生ら切りつけ 逮捕の高2「事件起こし死のうと思った」供述 | 事件 | NHKニュース
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3 京都アニメーションへの放火事件
2019年7月18日昼前、京都アニメーション第1スタジオに当時41歳の男が侵入、バケツからガソリンを建物1階に撒いてライターで着火した事により、爆燃現象が発生した。
京都アニメーション放火殺人事件 – Wikipedia
結果としてスタジオは全焼、社員36人が死亡、33人が重軽傷といった大惨事。
4 北海道で、精神科医師が患者に刺殺
2013年8月21日午前11時5分ごろ、北海道三笠市宮本町の市立三笠総合病院の診察室で、診察中に患者の男(当時55歳)が精神科医、宮下均さん(当時53歳)の胸を包丁で刺し、男性看護師に取り押さえられた事件。宮下さんは間もなく死亡した。
診察室で医師刺殺の疑い 北海道・三笠、患者を逮捕: 日本経済新聞 (nikkei.com)
どれも痛ましい事件ばかりです。
その他にも種々あります。
明日は自分や家族が被害に遭うかもしれません。
1人1人が真剣に向き合わなければならない問題であると言えるでしょう。
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情報共有と相談窓口の周知徹底の必要性
冒頭であげた本件の防止策である、情報共有と相談窓口の徹底は、何故、必要なのでしょうか。それぞれご説明します。
情報共有の必要性
2018年に実施された、全国訪問看護事業協会のアンケートでは、訪問看護師のうち、約半数が、利用者や、その家族から何らかの暴力を受けたことがあるとの結果が出ています。(身体的暴力は、45.1%。精神的暴力は、52.7%。)
さらに、事業所へのアンケートでは、ほとんどの事業所が、暴力に対する対策が必要(97.5%)としていますが、そのうちの約6割が、「どうしたらいいか分からない。」としています。
暴力が生まれてしまう背景や、事業所がどうしたら良いか分からないとしている背景には、事前情報の不足があるのでは無いでしょうか。
今回の事件で言えば、複数の病院で様々なトラブルを起こしていることや、暴言があることを、事前に共有出来ていれば、対策は取れたはずです。
海外では、警備員や警察官が同行するケースもあるそうです。
情報共有には、個人情報の問題がありますが、
医師を守るための正しいルールを作り、ルールに則った情報共有
をしていくことが、医師のみならず利用する私達をも守ることに繋がるのではないでしょうか。
相談窓口の必要性
心の病は誰でもかかりえるものです。
いつ、誰がなっても不思議ではないからこそ、悩んだ時、あるいは悩んでいる人がいた時に、寄り添える場所が必要です。
今回に事件では、渡辺容疑者が、明らかに母親への依存度が高いことが伺えます。
また、母親の診察となると見境が無くなるところが、過去の病院への通院暦からも窺えます。
何かに頼ったり、支えになっているものが無くなったりした時、それが大きければ大きい程、失った時に受ける心のダメージは計り知れません。
責任を他者のせいにしてしまっていることは、自分では中々気が付かないでしょう。周囲の人から見て、危険であれば、迷わず相談しましょう。
厚生労働省では、窓口を用意しています。
【厚生労働省相談窓口】
まもろうよ こころ|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
社会的反響の大きかったニュースのため、印象に残っている方も多いと思います。
ニュースを見ていて感じるのは、発生した時ばかりで、その後の経過や結果を、殆どの場合、伝達しないということです。
今回、調べて分かった、渡辺容疑者の母親への愛情と、責任の他者転換、病院間のネットワーク不足ということは、ニュースだけ見ていても分かりませんでした。
理由が分かれば、対策もしていけます。
誰もが必要な医療だからこそ、誰もが安心して医療を受けられ、また、医師も安心して診察できる環境にしていくために、1人ひとりが出来ることをしていきましょう。
皆が安心して過ごせる世の中のために。
【この記事を書いた人はこんな人です!是非、ご覧下さい!↓↓】
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